手術の時期は?
手術は大変ですか?
手術は目の回りの局所麻酔で出来る手術で通常10〜15分程度で終了します。
麻酔も痛くないし良く効くので手術中はほとんど痛みを感じないと思います。
術後は異物感を感じる事がありますが、全身麻酔の手術と違いずいぶん楽だと思います。
しかし眼の周りを触られるのは誰でも嫌なものなので少しは我慢が必要です。
手術中は顔に布をかけて手術するのですが、私は勤務医時代に閉所恐怖症の方でどうしても手術出来ず全身麻酔下で手術した経験があります。
又、白内障は少々進行しても手術で挽回できる病気ですが余り放置して白内障が進行しすぎると手術自体が難しくなり、時間がかかったり術後の視力改善に日にちがかかったりする事があるので、そこそこの頃に手術の踏ん切りをつけたほうが良いと思います。
手術の麻酔と手術時間は?
白内障手術は機械も技術も非常に進歩し安全性も向上しました。麻酔も点眼麻酔やテノン嚢下麻酔と言われる方法で良く効きますのでほとんど痛みを感じないと思います。
手術中は医師との会話も出来るし話も出来ます。通常10〜15分程度で終了します。
麻酔の後、角膜のふちに3ミリ程度の傷口を作り、水晶をとって人工レンズと入れ替えます。人工レンズは一般的には眼鏡レンズを薄く小さくしたような板レンズですので人工レンズを入れてもそのままで遠近ともピントが合うわけではなく、くっきり見るには手術後も眼鏡が必要です。
◎乱視矯正眼内レンズ、多焦点眼内レンズ取り扱っています
最近では眼内に挿入固定するレンズは乱視矯正機能付き(トーリック眼内レンズ)や、2007年に厚生労働省の承認された遠近両用機能付き眼内レンズ(多焦点眼内レンズ)が開発されています。
当院でも開院当初はこういったレンズは採用していませんでしたが最近のデータを検証した結果、予想よりも良い結果である事が解り、どちらのレンズも平成26年度から採用しています。
ただ、全ての人が満足出来るレンズではない為、本人と相談の上使用していますが、現在の所非常に良い結果で喜んでいただいています。
傷口はどこに作りますか?
手術の傷口は強膜に作る方法(強角膜切開)と角膜のフチ(角膜切開)に作る方法があります。
1)強角膜切開
強膜に傷口を作る時には表面の結膜を一旦剥がす必要があるので術後結膜下出血がでて白眼が赤くなる事がありますが、術後には傷口の表面が結膜で覆われるので術後感染の確率を減らせます。
2)角膜切開
角膜に傷口を作ると結膜下出血を起こす事がほとんどありませんが、角膜創が露出することになります。
当院では術後感染率を減らす為に原則、強角膜切開を行っていますので術後結膜下出血が見られる事があります。ただし、緑内障で将来緑内障手術を受ける可能性のある人や術後に結膜下出血を絶対起こして欲しくない方には角膜切開で行っています。
入院はいらないの?
私は勤務医時代に入院出術と日帰り手術どちらも行っていましたが、入院されて手術を受けても、日帰りで手術を受けても術後の痛みや炎症の程度、術後手術合併症のリスクは同じです。ですから術後通院困難な方は入院で、そうでない方は通院で手術を受けるなど、どちらが楽かで決められれば良いかと思います。
ただし、当院には入院設備が無いため入院手術を希望された場合近隣の病院に紹介させて頂いています。
手術中の注意は?
手術は顕微鏡越しに行う細かい手術の為、キョロキョロされると手術がやりにくいので大体一ヶ所を見つめる様にして下さい。手術中は声も聞こえるのでその都度指示しますが主に足下(つま先)あたりを見ていてもらう事が多いです。
痛みを感じる事はありませんが、瞼や目の回りをさわる感じはあると思います。誰でも目の回りを触られるのは嫌なものですが、心配せずなるべくリラックスしましょう。
手術後の注意は?
①術後してはいけない事
1)手術した眼を押さえる事 2)水などで濡らす事②必ず診察を受ける
手術翌日、水曜日から土曜日迄毎日診察を受けて下さい。 その後、およそ1週後、2週後、1ヶ月後、3ヶ月後に受診していただきます。
③洗顔や自己洗髪は術後1週目から可能です。
術前、手術、術後。定期検査まで一人の医師(院長)が行います。 手術当日は、緊急連絡用電話番号を渡し、院長がクリニックで当直しておりますのでご安心下さい。
術後、日常生活での注意点
■ 入 浴
首から下の入浴は手術当日から可能ですが、傷口を濡らしそうならシャワー程度にした方が良いでしょう。
■ 洗髪、洗顔
術後1週間目までは洗顔や自分で洗髪する事は避けて下さい。
[ 化粧、ひげ剃り ]
術後1週間はお化粧は控えめに、アイメイクは1ヶ月は避けて下さい。毛染め、パーマは術後1週間からOK。 電気カミソリは手術当日からOK、T字カミソリは術後1週間は控えて下さい。
■ 飲酒、タバコ
食事制限はありません。飲酒は炎症を悪化させたり、傷口から出血を起こす恐れがあるので術後1週間は控えて下さい。タバコも煙が眼に入ると良くないので1週間は控えて下さい。
視力改善はどの程度ですか?
眼の中の水晶体を取りきって人工レンズを入れるので、白内障の分だけは眼の機能は改善します。ただし他の病気を持っている(緑内障,網膜剥離,糖尿病網膜症,黄斑変性症など)場合、視力改善があまり見られないこともあります。
当院では当然、術前に白内障以外の病気も調べていますが予想外に術後視力が出なかったり予想以上に視力改善する事もあります。
手術翌日から見えますか?
当院では手術翌日に視力検査をしていますが、手術翌日から視力が改善する人もいれば、数ヶ月に渡って徐々に良くなる人もいます。
手術直後の視力にこだわるよりは色や物の見え加減を楽しんで下さい。手術翌日の診察の帰りに花屋さんで綺麗な花を見たり本屋さんで鮮やかな絵本や写真を見て楽しむ事をお勧めします。
眼内レンズの手入れや入れ替えが必要ですか?
人工レンズは眼鏡やコンタクトレンズと違ってはめはずしが出来ません。人工レンズが濁って来る事は非常に稀な事なので一度入れたレンズは入れ替える事無く一生もので特に手入れは不要です。
むしろ眼内レンズを取り出す方が難しいくらいです。ですから、拒絶反応が強く出たりとか、術後の屈折度数が予想と大きくずれて度数を換えたい時など余程の時以外、眼内レンズを取り出したり入れ替えたりする事は行いません。
普通の術後の状態は?
術後は、疼痛、充血、結膜下出血、流涙、異物感、角膜びらん等起こる事がまれに ありますが、いずれも1日~1週間程度で軽快します
手術の合併症は?
1)手術中に起こるもの
①駆逐製(くちくせい)出血(0.05%)
手術中に急激な出血が眼内で起こる事で、すぐに手術を中止し傷口を閉じる必要があります。術前に完全に予測、予防する事は不可能です。非常に稀な合併症ですが万が一起これば重篤な合併症の為、全員に説明のみする事にしています。
②後嚢破損(1〜4%)
術中に残すべき水晶体嚢(ふくろ)の後ろ部分が破けてしまう事です。術前に予測出来る場合と出来ない場合があります。残った水晶体の濁りの除去、水晶体の奥の硝子体の処理、眼内レンズの固定を慎重に行う為に手術時間が長引く事があります。 状況によっては眼内レンズを挿入出来ない場合があったり再手術で眼内レンズを挿入したり、縫い付け(縫着)する事があります。
2)術後に起こるもの
①術後眼内炎 (0.04%~1%)
手術の後に眼内に感染を起こしてしまう事です。発症した場合失明の可能性のある重篤な合併症で術前に完全に予防する事は不可能です。 早期発見が重要なので術後受診日は必ず受診して下さい。
②水泡性角膜症
角膜が(特に角膜内皮)が手術の為に痛んでしまい、透明な角膜が白く濁ってきて視力が落ちる事です。角膜内皮が元々弱ってる人に起きる事があります。本格的に起これば角膜移植(角膜内皮移植)を要する事があります。当院では術前術後に必ず角膜内皮の計測を行っています。
③後発白内障
術後数ヶ月~1,2年後に眼内レンズを固定している水晶体の袋が濁ってきて視力が落ちたり霞んだりする事があります。レーザー治療で濁りを吹き飛ばす治療をすれば完治します。
白内障は再発するの?
眼の中の水晶体を取りきってしまうので白内障が再発する事はありません。しかし眼内レンズを支える為に残した水晶体の袋が濁る事があります(後発白内障:術後10〜30%に発生)
その為にまた霞んで見えたり視力が落ちたりするときはレーザーで濁りを吹き飛ばしてやれば術後の見え方に戻ります。
手術後の見え方はどうなるの?
●羞明(まぶしさ)
局所麻酔の手術で全身への影響が無いと入っても眼にとっては大手術です。短時間のうちに濁った水晶体が無くなり、一挙に光が網膜に届く様になりので、慣れるまではまぶしく感じる事があります、まぶしいならサングラスの使用をすすめます。
●青視
濁った水晶体でさえぎられていた短波長の光が網膜に届き易くなるため手術直後は全体に青みがかって見えたりする事があります。当院では短波長の光を通しにくくする為、透明黄色に着色した眼内レンズを採用しています。 また、手術中の顕微鏡のまぶしいライトで眼がくらみ、赤っぽく見える人もいます。 いずれも徐々に慣れてきて問題ないですが気になるなら薄い茶色系のサングラスの使用をおすすめします。
●飛蚊症
術後は濁った水晶体がなくなり網膜に沢山の光が届く様になるので、手術前は気づかなかった飛蚊症を感じたり、増えた様に感じる方がおられます。眼の病気でおこった飛蚊症でなければ心配ないです。 当院では手術翌日の診察時に必ず散瞳検査を行い、網膜などの病気がないかを調べています。
●グレア
術後色んな方向からの光が眼に入るので人工レンズのフチ(エッジ)に反射した光が視野の隅っこに三日月型の雲のような形が見える方がおられます。比較的若年で、瞳孔(ひとみ)の大きい人に起こる現象です。当初は気になるかも知れませんが徐々に慣れて来る事がほとんどです。
●結膜充血、結膜下出血
手術の傷口は主に上まぶたに隠れる辺りに作るのですが、術後しばらくは充血が見られたり、傷口から1滴でも出血が出て広がれば手術翌日でも吸収されず、白眼が真っ赤になる事があります。いずれも7日程度で吸収されるものですが、どうしても眼が赤くなったら困る方(お孫さんの結婚式に出席したい、家族写真を撮る予定があるなど)があればお申し出下さい。傷口の作り方を工夫してほとんど出血しないようにします。